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榎本恵牧師のコラム

2023/02/20

死に捕えられた人を救い出さず、殺されそうになっている人を助けず、「できなかったのだ」などと言ってみても、心を調べる方は見抜いておられる。魂を見守る方はご存知だ。   箴言24:11-12


この2月から、3年ぶりに海外伝道へ出かけている。コロナのパンデミックにより、しばらく途絶えていた、台湾、ブラジルでのアシュラム集会が開催されるのだ。今、台湾でのアシュラムを終え、ブラジルへの旅の途中、ニューヨークでこれを書いている。

台湾でのアシュラムは、今年で51年になる。昨年はその記念のアシュラムが開かれたのだが、残念ながら、コロナのために行くことができなかった。今年、ようやく道が開け、台湾の友と懐かしい再会を果たし、共に、祈り、み言葉に聞くことができた。振り返れば、今から50年前の台湾は、大陸から逃れてきた蒋介石の国民党の独裁政権下にあり、台湾全土には、戒厳令が敷かれていた時代であった。1947年に、台湾の民衆が、蒋介石の軍隊により大量虐殺されるという白色テロ「228事件」が起こり、台湾の民衆は、日本の敗戦以降も、塗炭の苦しみを受け続けていた。そんな恐怖が支配する社会の中で、台湾でのアシュラムは始まった。父榎本保郎は、以降、台湾のキリスト者と共に、台湾各地でアシュラム運動を展開していった。しかし、その父も、それからわずか4年の後に天に召されていく。誰もが、これで、アシュラム運動も、終わるだろうと予想した。けれども、アシュラムの灯火は消えなかった。それが「神から出たものであった」からだ。その後も、台湾では、激しい民主化運動が起こり、ついに台湾基督長老教会総幹事の高俊明牧師が逮捕、投獄される。彼は、台湾のキリスト者のリーダーであり、同時に熱心なアシュラム運動の推進者でもあった。高牧師の受難は、台湾内外に大きな衝撃を与えたが、それでも、「その計画や行動は、人間から出たものではなく」(使徒5:38-39)、自滅するどころか、ますます強くなり、ついに台湾は民主化を成し遂げ、1996年には初の直接選挙による総統が選ばれ、釈放された高牧師は、政府の要職に就くという、まるで奇跡物語のような出来事が起こった。

50年の間、私たち日本のアシュラムは、台湾の友と共に、祈り、み言葉に聞き続けた。その後も、SARS、頻発する地震、そして大陸からのミサイル威嚇など、数えきれないほどの、困難が、台湾を襲っている。もちろん私たち外国人が、台湾問題にかかわるときは、慎重の上にも、慎重を期さねばならない。「外国勢力による関与」などと言われかねないからだ。けれども、「死に捕えられた人を救い出さず、殺されそうになっている人を助けず、『できなかったのだ』などと言ってみても、心を調べる方は見抜いておられる。魂を見守る方はご存知だ」(箴24:11-12)。私たちには、大きな政治力もなければ、潤沢な経済力もない。しかし、一つだけあるものがある。それは、この心を調べ、魂を見守る方の力だ。

どんな時も、あきらめず信じ祈り続ける。そこにこそ本当の力がある。私たちは、この50年の歩みを通して、それだけは自信を持って言うことができる。

この50年、信仰の先達たちが、そうしたように、私たちもこれからの50年を、この力を信じ、祈り、み言葉に聞いていこう。これこそが、私たちの箴言(鍼のように効いてくる知恵の言葉)なのだ。

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