2016/10/04
思い煩いは、何もかも神のお任せしなさい。神があなたがたのことを心にかけてくださるからです。 ⅰペトロ5;7
最近、耳から離れない歌がある。私は牧師だから、何にか賛美歌でもと言いたいところだが、残念ながらそうではない。実はそれはレキシという一風変わった名前の歌手が歌う「一休さんに相談だ」という曲だ。きっと「レキシ」と言ってもこのホームページを見られる方は、知らない人の方が多いかもしれない。私も息子が車の中で聞いていたのを偶然耳にしなければ、自分自身では聞くこともなかっただろう。しかし今は、ずっとその「一休さん、一休さん」というキャッチーな繰り返しが頭の中から離れない。レキシの作る歌は「狩りから稲作へ」、「古今と新古今」、「キラキラ武士」、「最後の将軍」などと、なんともふざけた名前の曲ばかりなのだが、それがメロディーとなって歌われる時、思わず口ずさみたくなってしまうのだ。歌詞は、どれも歴史にまつわる内容で、しかも思わずニヤリとさせるほど、よく練られている。なかでも、私の一番のお気に入りは、この「一休さんに相談だ」という歌だ。
「あるあるよくあるそれ 暗闇の中で立ち止まること 何にも見えなくなって どうにもいかなくなる どうする? ねぇどうする?そんな時キミならどうする?そうだ一休さん 一休さん、一休さんに相談だ」(レキシ「一休さんに相談だ」より)
とんちの一休さんとして、有名な一休禅師。室町時代に活躍した、臨済宗大徳寺派の僧侶で、天皇家や足利将軍にも影響を及ぼし、同時に民衆からは大いに慕われたという。しかし、調べてみると、これが相当の破戒僧であったらしく、その最期は遊女の腕枕の中で「死にとうない」と言ったとか言わなかったとか。
暗闇の中、道に迷い立ちすくんでいる時、一休さんならどう答えただろう。「橋の端で立ち止まらないで、堂々と真ん中を歩けば良い」と高笑いする一休さんを想像するとおもしろい。確かに私たちは、人生の中でどうしようもない状態に陥ることがある。挫折や失敗、病いや倒産、別れや死。それらのものを前にして、不安と恐れの中にある時、誰か相談する人はいないのか、誰かこれを解決してくれる人はいないのかと考えるのは、私たちの常である。そして、どこかによい相談相手はいないかと、お坊さんは?、牧師さんは?、お医者さんは?、政治家さんは?と、探し回る。もちろん運良く一休さんのような相談相手の見つかることもあるだろう。けれども、大方は、失望と落胆に終わり、酷いものだと、財産のすべてを失ってもわからないまま。そんなことこそ、よくあることなのではないだろうか。なぜなら、私たちが相談したい悩みも、不安も、恐れも、それらはすべて私の外にあるのではなく、私の中にあるからだ。たとえ外側の問題が誰かによって一つ解決したとしても、それは次から次に襲ってくるのだ。それでは、一休さん一人では足りない。
「思い煩いは、何もかも神にお任せしなさい。神があなたがたのことを心にかけてくださるからです。」(ⅰペトロ5;7)聖書は、この人の持つ思い煩いを、ただ一言「任せる」ということで解決してみせる。悩みや悲しみ、苦しみを、すべて神に任せること、すなわち手放すこと、静かに信じることによってこそ、あなたの内にある問題が解決されることを教えるのだ。
さて、先ほどの歌は続けてこう歌う。「大人になっても忘れなかった あのコの声が聞こえてくるから あわてないで あわてないで」と。落ち着いて、落ち着いて、神様はきっと、一休さん以上にあなたのことを心にかけてくださっている。
その神様を信じ、委ね、神様に、イエス様に相談しよう。
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